螺鈿の取っ手鉄瓶あられ


嫁入り道具に古物が多かった。是もその一つ。長火鉢(是も古物)と共に愛用している。一年ほど使っていなくてすっかり錆びさせてしまった。申し訳ないことだ。「申し訳ない」って、新しいモノに対してはあまり思わない感情だが、古物に対してはよく思う。

さて、さびをおさめるため、お茶で煮だすとにする。いつもは中だけの事だけど、今回は外側まで錆び始めているので、寸胴の鍋に鉄瓶を入れ、すっかりつかるほどのお水を入れて、毎日アルマイトのやかんで煮だしているほうじ茶の出し殻をその中に入れ煮始めた。沸騰するにつれて水が黒ずんで来る。持ち手と蓋には銀細工が施してあるので、是は浸からない様にする。さ、是を3度ほど繰り返せばさびは収まる。後は毎日使ってあげる事だ。

鉄瓶の通販のページで見つけた使い方の説明
1.鉄に含まれておりますチタンとお茶に含まれておりますタンニン酸とが結合して、お茶の味を更に美味しくひきたてます。
2.急須は使用後にそのままにして長時間置きますと中の汁が黒ずんでまいりますが、それは鉄分ですのでそのまま召し上がっていただいて結構です。
3.底面に「へそ」のようなものが二〜三個ありますが、これは玉金といい、制作上必ずできるものですのでいじらないでください。
4.内部は南部独特の木炭炉で夜九百度の温度で熱処理により、四三酸化鉄皮膜(焼皮)を施してあり、これにより金気止・錆び止めをしてあります。
5.錆びる原因となるため、内部・外部とも洗剤・研磨剤・たわしなどで磨かないでください。
6.使い初めの臭いを取るために、水を八分目いれて煎茶葉を一つまみいれて10分間くらい沸騰させてからお使いください。
7.鉄瓶を火から下ろしましたら中の水は完全に出し切ってしまい、余熱で完全に乾かしてください。
8.使用して行くうちに、所々に赤い斑点や淡黄色の斑点が付くことがありますが、これは南部鉄瓶独特の現象ですので、気にせずにお使いください。
9.万一錆が生じた場合には、粉茶を煎茶碗一杯分を布巾に包んで鉄瓶の中にいれ、10分間ほど沸騰させてください。これを二〜三回程繰り返すことで、茶渋が鉄と反応してタンニン鉄となり内部に錆止め・金気止めの効果を発揮します。
10.外側は乾いた布で拭くようにしてください。また、新聞紙などで包んだままにして長時間置いておきますと、新聞紙の湿気が錆が出る原因となりますのでお止めください。

農具〜藁むしろの織り機の足


玄関に花を生けたのだけど、不安定な花器の止めに丁度いい木の道具を見つけた。しかも荒削りな木の肌が、安物の木の台を隠してくれた。二股に割れた木で作られた道具は、藁を織るための道具だそうだ。穴に横棒を通して、別に有る駒に付けた糸を交差させて「藁むしろ」を織っていく。畳屋の孫としては気になる道具だ。いつか自分で織ってみたいと、古道具屋から買っておいたのだが、田んぼを作っていないので藁もなかなか入手できない。(最近は稲の収穫の際に刻んでしまう)骨董ブームで、古道具を何でもかんでも飾り物に利用するのは気持ちが悪くなる事しばしばだが、そうならないための私だけの小さなこだわりは、「道具の機能を生かすこと」だ。いや、ほんのたわいもない事なのだけど。

西洋の糸車


スイスに行った去年の12月クリスマスマーケットがあちこちで開かれてた。クリスマスを目指して展示会の予定を組んだのだから当たり前なのだけど、とっても得した気分。ちょうど去年の今日、一人でジュネーブに行ったのです。ジュネーブでもたまたまマーケットに遭遇して、吸い寄せ荒れるように公園に向かった。迷子になるかもと思いながらも、足は止まらない。あちこちジグザグに歩いていたら家具をおいている店にたどり着く。奥の方に糸車らしきものが見えた。ロココ調の確か花柄だったと思う。傘の付いたのとシンプルなのと。手振りでどう動かすのかと尋ねたら、やってみせてくれ、私にやってみろという(もちろん手振りで)でもなかなかうまくいかなかった。解体してもって帰りたかったなぁ。。。ところで、残念なことに傘が裾の赤いフリンジの部分しか写っていない。このとき大事なのは糸車だったのよね。でも傘も入れておくべきだった。もう同じものには出会えないかもしれないけど、いいわ、絶対また探しに行くから。そのときは背負ってでも持って帰ろう。

おじさんに値段を聞いたのだけど結構高かったと思う。どうやって動かすのかおじさんが実演してくれた。

猫足の栃の御膳


猫足のおぜん(ちゃぶ台)は、物心ついた頃には毎日使っていたもの。家族6人がこの御膳を囲み食事をした。食事が終わると,母はやかんから少しのお茶をこぼして,子供に拭かせた。御膳の真ん中に節のへこみが有って,くぼみにたまったお茶を眺めながら,御膳を拭いた。目をつむっていてもそのくぼみの形を思い出せた。子供たちが大きくなって、改築した家には御膳の代わりにテーブルが来た。私が再びふるさとに帰った時,物置で埃にまみれていたこの御膳を貰い受けた。猫足も一本壊れていて、あまり厚くはない一枚板もかなり反り返っていた。オイルを刷り込むと栃特有の模様が浮き出た。懐かしいくぼみが目を覚ました。

スイスで見つけたかせ巻き


ジュネーブのクリスマス蚤の市で見つけたかせ巻き。キリンさんから同じ型の茶色いものを頂いていたので、蚤の市で分解されていたがすぐにかせ巻きだとわかった。多分氷点下の気温。何度か右往左往しながら、車の中で暖をとっていたおじさんに近づき、窓をたたく。後は身振り手振り指振りで値段交渉。言葉はなくとも何とかなると実感。

使い方は、車4本の腕を伸び縮みさせて、かせの大きさにあわせ、糸をたまに巻き取る(のだとおもう)想像だが、中心の丸いくぼみは、玉を途中で置いておくためではないかな。。? 象牙(たぶん)のふち飾りと支柱の装飾がいかにもヨーロッパ。異国の昔の暮らしを想像してみる。

夏のおひつ。めしかご(飯籠)


最近うちにきた古物。 おひつ(櫃)は、飯びつの丁寧語。夏に使う竹で編んだものをめしかご(飯籠)と言う。夏場ご飯が腐らないように、朝炊いたご飯を入れておく。私が子供の頃、母は敷き布(お赤飯を蒸すとき使う編み目の布)を敷いてからご飯を入れてたからこのかごもそうするんじゃないだろうか。竹の損傷も無くてつやつやしている。最近はご飯を一度にたくさん炊く事も無くなったけれど、お赤飯を蒸したら、これが一番良いのかもしれない。お赤飯入れたら美しいだろうな。こんな記述を見つけた。

「釜で炊き上げたご飯をお櫃に入れて保存するのは,炊き上がったご飯を直接つぎ分けることが行儀の悪いこととされたためであり,檜〈ひのき〉や椹〈さわら〉で作られているお櫃の木肌に蒸気を吸い取らせて,水分がこもらせずにおいしく保存するためでもりました。』

ところで、この飯籠が乗っているテーブル、台がたためる引き出し付きのもの。京都で一緒に暮らしていた友人から譲り受けた。 ふみちゃん おぼえているかね?。譲り受けた頃からでも10年以上。物持ちのいい彼女がもし京都に来た頃から使っていたらば、その前に16年。通算26年。これもなかなかの古物だ。

葛布帖


かねてから手に入れたかった、葛布帖と言う本が届いた。静岡に古くから伝わる「葛の布」の105種布見本が収められている。民芸運動柳宗悦氏の勧めで、外村吉之介氏(倉敷民芸館の館長)によって製作された。
昭和13年初版が出版されたが日々所在が不明になり、再版の要望も有ったが再度55年に「初版」として出された背景には、当時と同じ良質の葛布の再生がすでに難しくなっていたからだそうだ。今から30年以上前の事だ。

木綿以前の繊維がごく身近な植物だった事を知ってから、葛や藤やカラムシでどうやって糸を作るのか、参考書は無いのかと探しまわって「葛布帖」と言う本がある事を知ったが何処を探してもみつから無い。古本でしか手に入らないと言う事も知らなかった。そんな時雑誌で見た、矢谷左知子さんと言う方の「草の布」集められた「草の糸」に心を奪われた。そして矢谷さんが糸作りの参考にされている本の写真、、「葛布帖」の黄色い表紙。ああ。。これが探していた本だったんだ。

それから倉敷の民芸館に電話で問い合わせて、古書で探せば時々出ているらしいと言う事を聞き、早速ネットの古書屋を探した。昭和55年で15万円の本。。一体幾らだろうと不安になったけど外箱が少しよごれていたので8万円ちょっとで出されていた。それでも、こんなに高い本は始めてで、しばらくは思い悩んだけれど、2日にらみ続けて決心した。

そうして、百五十冊 其第 八一 番也 が私のもとに届いた。
(日々の事 2003年07月10日の記事より)